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漆黒の聖女に癒やされて 中宮寺の菩薩半跏像(産経新聞)

 天上の音楽さえ聞こえてきそうな、妙(たえ)なるほほ笑み。法隆寺近くの小さな尼門跡(あまもんぜき)寺院、中宮寺の菩薩半跏(ぼさつはんか)像(国宝、飛鳥時代、寺伝では如意輪観音)は日本で一番やさしい仏さま、と思う。

 聖女、慈母などと例えられるがなるほど、細面にふっくらとしたほお、しなやかな肢体(したい)は若い女性を思わせる。一方で聖徳太子がモデルとの説もあり、独特のポーズ(半跏思惟、はんかしい)は人々を救うため思いにふける慈悲の姿なのだそうだ。

 なんといってもその魅力はつややかな漆黒(しっこく)の肌にあった。光を受けて、時に泣いているようにも見えるから不思議。かつてはからだに肌色、衣服には朱や緑青(ろくしょう)の彩色が施され、宝冠や装身具もつけていたらしいが、むしろ時が像をより神秘的にした。色がないからこそ想像力をかきたてる。

 中宮寺は聖徳太子が母、穴穂部間人(あなほべのはしひと)皇后のためにつくった宮殿を寺に改めたと伝わる。後に皇女が入って尼門跡となった。が、像の由来はよくわからない。高さ約1.26メートルと小ぶりなのに頭、上半身、台座などを複雑に組んだクスノキの寄木造りであるのもちょっとした謎。特別な由来のある木でつくられたかも、と想像するのも楽しい。

 今月いっぱい、平城遷都1300年を記念して普段は見られない表御殿(江戸時代)を特別公開中。かわいらしい黄金の花鳥画など、尼門跡の気品あるたたずまいが素晴らしい。幼くして入寺した皇女らにとって、ご本尊は慈母そのものだったろう。

(文 山上直子、撮影 大塚聡彦)

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